単身者の引っ越しでは二人で持つような大きな荷物が無いのが一般的です。ゆえに一人で作業することで破格値で引っ越しを請け負う事が出来るのです。ところが某組合に加入している事でかなり間違った認識を持ったお客様も多いのです。個人タクシーと同じような組合なので自営業なのですが、世間では組合を会社組織と勘違いしていて当店が引っ越しを中心に行っている個人運送店と思っていないのです。個人の運送店は高齢の方が比較的多いので力仕事はお客様の方でお手伝いの方が必要と勝手に思ってしまい、実は荷作業には逆に迷惑になるド素人が手伝いに来てしまう事です。引っ越し作業ははっきり言って幾何学的なパズルですので適当にトラックに押し込んでいる訳ではありません。素人は手を出さない方が効率的な場合がかなりあります。しかし実家に荷物を届けた場合などは家族がいらっしゃいますので良心的な方は積極的にお手伝いする方も多いのです。
 あるリピーターさんの引っ越しで確かもう4回目だったと思いますが、遂に実家に帰った女性がいらっしゃいました。元々実家も東京でしたがこの女性は学生の頃から一人暮らしを選択していたようで社会人になってからも当店で引越しの依頼を頂いていました。毎回アパートにはご両親がお手伝いにいらしていて、お客様よりもご両親の方と顔馴染みになった感じでした。最後の引っ越しではもう一人娘が嫁に行く事を前提に以前の戸建ての家から実家はマンションへ引っ越されていました。以前のような子供部屋はもう無くなってしまいましたがこのマンションへ荷物を搬入したのです。毎回同じようにお父さんがお手伝いしてきました。しかし5往復前後するとお父さんの姿は無くなって代わりにお母さんが手伝ってきました。もちろんこちらは業者ですので特にお手伝いは必要ないのですが台車に荷物を載せて玄関まで行くと出てくるのはお母さんになったのです。そこで何気なく聞いてみました。「お父さんはどうしちゃったの?」するとお母さんが小声で言いました。「さっき段ボールを運んでいたら突然ギックリ腰になっちゃって立てなくなっちゃったの。さっき横になってからそれっきり!」という訳で部屋に閉じこもって激痛に耐えていたのでした。やはり高齢で無理な力仕事をやるものでは無いですね。
 もう一方(ひとかた)当時74才のおばあちゃんの引っ越しを行った時です。この女性はアパート暮らしから自宅の戸建てに戻ったようです。アパート暮らしをしていた理由は定かではありませんが、わざわざ自宅の方にはお手伝いを呼んでおいたからとおっしゃっていました。積み込み時は一人で普通に搬出を行いましたが自宅の方では2階へ荷物を置くのがメインだったので気を利かせたのでしょう。そして引っ越し先の自宅へ着いてそこで待っていたのはとても力仕事は不可能に見えたおじいちゃんでした。そこでお客さんに尋ねたらこの男性は実の弟さんだったのですが、いくら自分より年の離れた男性とは言え68才というのです。この年齢で1階から2階まで段ボールを抱えて何回も上がるなどとても無理に見えました。とりあえずすぐに搬入作業にかかりましたが、弟さんはその姿を見て手伝う素振りが全くなく一切段ボールにも触れずに部屋に荷物を置くたびに会話をしたいただけで、何のために呼ばれたのか不思議な存在でした。まあ年金暮らしで暇だったのは明らかですが。最後に清算の時にお客様のおばあちゃんが一言声をかけました。「全然弟が力にならなくて御免なさい!」この言葉に一言返しました。「いいえ!倒られても困るので。」基本的に業者の仕事に素人が手を出すのは止めた方が良いのです。まして老人では尚更です!

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 おとめ山公園の東側の池には岸に亀の姿が数匹見られました。亀さんたちがのんびり暮らすにはいい環境のようです。