地方の方が東京で一人暮らしをされている場合は引っ越しの際は両親、特に母親が実家からお手伝いにいらっしゃるケースが多々あります。また都内で元々お住まいでも実家が狭かったり、通勤に便利な場所などの理由で親とは同居しないで一人暮らしをしている方もいらっしゃいます。このケースでは親も近くにお住まいですので、毎回引っ越しの度に顔を出すお客様のお母さまもいらっしゃいます。実際リピーターの方ではお母さまの方が口数が多くて顔なじみは依頼をしたお客様よりもお母さまの方になっている場合があります。しかし女性はそれほど長くは単身を貫く方は多いとは言えません。若い女性はみなさん依頼が来なくなります。多くは幸せを掴んだ結果と予想するわけです。
 あるリピーターの女性の引っ越しを承りました。いつも引っ越しの際にはお母さんが必ずいらっしゃったお客様です。依頼の間隔は3年以上はあったと思いますが、この時はすでに4回目の依頼です。もう若い女性の引っ越しという訳にはいかないでしょう。それなりの年にみなさん成ってしまいます。実はこのお客様のお母さんも単身で一人暮らしをしていました。一度だけはお母さんの方の引っ越しでリピーターの娘さんにお目にかかっていました。今回はまた娘さんの方の引っ越しです。一般的には年齢と共に荷物が増えてゆく方が多いのですが、このお客様はいつも大体同じような物量です。引っ越しも慣れたもので荷造りも完璧です。非常にスムースな引っ越しでした。しかしいつもとは何かが違います。引っ越し元での搬出中にふと思い、いつもとの違いに気付きました。必ずいらっしゃるお母さまがいらっしゃいませんでした。さすがに何回も引っ越しをしていればお母さんも力仕事は辛いのでもういらっしゃらないのは当然だと感じながら搬出を続けました。すると物量は以前と変わらないのですが、非常に小さな仏壇が荷物として一つ増えていました。おまけのもう一つ風呂敷に包まれた荷物がありました。どうみても骨壺です。何気なく聞こうとも思いましたが、この時お客様の方で口に出しました。「生前は母もお世話になりました。」そうです今回もちゃんとお母さんはここにいらっしゃったのです。
 なんか普通の荷物として荷台に載せるのも気が引けるので、「お母さんは自身の膝の上に載せますか?」と聞いてみました。「そうですね。そうします。」という事で助手席にお客様をのせてお客様は膝の上のお母さまを載せて新居へ向かいました。その後は依頼がございませんので、お母さんがちゃんと納骨されたかは不明ですが、すぐにお墓の手配は出来なかったのでしょう。以前に引っ越しを依頼されたお客様を荷物として運んだのはこれが最初で最後です。こちらこそお世話になりありがとうございました。

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 哲学堂公園の三そ(漢字が見当たらない)苑。中国。インド、ギリシャがなんで組み合わされているかわからない!