大切なお客様の荷物を台無しにする事故はやはりどうしても避けられません。年間に500件以上も引っ越しを行えば色々な事故に遭遇してしまいます。しかし必ず貨物保険に加入していますので、同じ荷物は戻らなくても、同等の賠償金が保険会社から支払われます。しかし新製品ならその購入価格や販売実績価格などが証明されれば同額が支払われますが、一度利用した引っ越しの荷物は必ず減価償却されますので、購入価格がそのまま支払われることはありません。また逆にアンティークな家具や美術品など大量生産されていない品物は保険会社に価格を申告しても、高額すぎると査定が入り、希望額が支払われるわけではありません。
 ある日リピーターの方の引っ越しを行っていました。元々は撮影背景のオブジェの配送依頼を受けていたお客様でしたが、今回はプライベートな引っ越しでした。引っ越し先は2DKのマンションで今回は家賃を抑える為に仕事仲間と二人で折半するとの事でした。以前のワンルームより2DKの部屋の1/2の方が部屋は広くなるとの事で、引っ越し先へ向かう途中で以前に撮影背景をレンタルしていたリサイクルショップに立ち寄って中古のアンティーク本箱を買い、それも積み込んで引っ越し先へお客様同乗で向かいました。マンションは国道沿いのマンションです。エレベーターで台車で搬入すればスムースに終わる引っ越しです。まず初めに直前に買い求めたアンティークの本箱を台車に載せて、エレベーターホールの前に置きました。そしてもう一台の台車に他の荷物を載せようとしていた時です。先ほどの台車に置いておいた買ったばかりの本箱が突風と共に倒れたのです。本箱のガラス戸のガラスは木っ端微塵に割れてしまいました。エレベーターホールに突風が吹いた原因はすぐにわかりました。このマンションのエレベーターホールには扉が無いのです。国道側とマンション裏とは筒抜けになっているのです。このマンションの裏はなんと新幹線の線路なのです。要するにマンションは新幹線の線路と広い国道に挟まれた場所にあるのです。故に新幹線が通過する度に突風が吹くのです。構造上エントランスにガラス戸を付けたとしてもガラス戸が風で飛ばされるほどの風が通過するので、物理的に国道側の入り口に扉は付けられないのではないでしょうか。しかし事前にエントランスで突風が吹くことなど初めて引っ越しで来たお客様にもわかっていませんでした。こちらも特に何もしていないのにアンティークの本箱は全損したわけです。その後はセオリー通りです。保険会社に書類を請求し、後日お客様に届けて記入をしていただいて、お客様の請求金額がそのままお客様の口座に振り込まれました。その後もこのお客様はこのガラスの無いこの本箱をそのまま利用していました。元々本箱ですので扉が無くても使用出来ますし、倒れた時の傷もアンティーク家具なので元にある傷と大差なかったので坊主丸儲けだったのではないでしょうか。こんな立地のマンションは他には無いと思いますが、流石に新幹線の突風のせいで家具が壊れたのをJR東海に請求は出来ないでしょう。同じマンションの引っ越しは以降絶対に行いません。マンションもこの特異事項を張り紙したり、賃貸契約時に知らせるべきです。


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哲学堂公園の入り口付近の理想橋です。大した橋には見えませんが!