引っ越しの要因も人それぞれなのですが、本人の意思に関係なく親の都合で引っ越す方もいらっしゃいます。と言っても社会人になる年齢ではもう自立して生きていくしかありません。親の都合通りにはいかない事もあるでしょう。しかし未成年の場合は親に扶養義務があります。それなりに独り立ちするまではどんな家庭でも頑張っているわけなのです。
 ある引っ越し依頼でごく普通の若い女性からの引っ越しを承りました。当日行ってみると普通の家庭でした。電話では若い女性客でしたのでいつもの単身世帯と思っていました。年の離れた男性がいらしたので明らかに父親であることが想像できました。荷物も少量しかなく冷蔵庫や洗濯機は親と同居でしたので当然所有していません。ほぼ衣類のみの簡単な引っ越しでした。引っ越し先も近所でしたし引っ越しの理由が少々不明でしたので、お客様同乗で引っ越し先へ向かう道中で色々訪ねてみました。若いはずです。高校卒業したての18才でした。そして引っ越し先には母親が待っているとの事です。引っ越し元に父親がいて引っ越し先で母親がいる引っ越しです。しかしすごく近所での引っ越しで理由がわかりません。もうすこし砕いてお客様が説明しました。今年やっと高校を卒業できたので、この機にやっと念願の母親と暮らせるようになったとの事。なんとお父さんは私より年齢が下でした。両親は若い頃に結婚してすぐに別れてしまったそうです。母親は幼少時は収入がなかったので、ずっと父親との父子家庭で育ったそうです。しかし40才を過ぎて母親もやっと経済的に余裕が出来たらしく、娘の高校卒業に合わせて2DKの家賃の高い部屋を借りられるようになったとの事でした。引っ越し先には待ちかねた母親が待機していてようやく実現できた母子家庭にウキウキした顔つきでした。この元夫婦の男女は縁りを戻す事は全くないそうです。民事上の問題も全くないようで、この母親が細かい事情を話したのですっかり内情がわかった次第です。
 また別の家庭でも同じような引っ越しを行いました。しかし内情は全然違いました。同じなのは父親との生活から母親との生活になる事だけです。依頼の電話は父親から頂きました。荷物の所有者はここの娘なのですがまだ小学生でした。荷物にランドセルもあります。荷物の搬出最中に父親が内情を伝えてきました。引っ越し元は一戸建ての普通の住宅でしたが、母親は若い頃に離婚してすでに所沢の広いマンションにお住まいなのだそうです。離婚当初はやはり母親に収入が無かったようで、父子家庭で娘を育てていたとの事です。しかし結婚を機に以前の職を辞めてしまって収入が激減したそうです。メインの収入は立ち食い蕎麦のアルバイトなのだそうです。実家の家があるので家賃は不要だったのですが、その後も娘を育てる収入が見込めずに、収入に余裕の出てきた元妻にお願いして娘の養育をお願いしたそうです。流石に低学年の小学生を助手席に同乗させるのも問題あると思いましたが、父親いわく、流石に元妻とは顔を合わせたくないという事なので、娘さんも助手席に同乗させて所沢まで向かいました。一言も会話もしないで非常に大人しくなされていて感心しました。
 どちらの家庭もその後の動向は判りかねるのですが、母子家庭でも一般家庭と同様に普通に暮らしていけた事でしょう。

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 哲学堂公園の池と池に通じる人口の小さな滝に脇の階段。上ると正面入り口。